2006.08.27

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「城下町検定」問題作成者に聞く!!
「城下町検定試験」募集案内
発行 彦根商店街連盟
編集 彦根商店街連盟広報部会

彦根城博物館学芸委員
野田浩子さんに聞く

野田浩子さん

 野田さんが彦根城博物館の学芸員として勤められるようになったのは11年前。文書史料を使った歴史の研究が専門で井伊家の系図や大名の儀礼、近世城下町の生活の様子などを調べ、博物館の展覧会などで発表されている。
「彦根に寄せてもらうまでは、詳しく知らないことの方が多かったです。ここに来てから日々積み重ねをしています。まだ、目を通していない史料がたくさんあります。新しい発見が隠れているんですよ。」
 博物館には国の重要文化財指定を受けているものだけで27800点の古文書が収蔵されている。野田さんはその中から、昨年の展覧会で江戸時代、彦根の食文化を担当され、あわせて図録も出版された。
「ずっと住んでおられると、なかなか実感を持つのは難しいと思いますが、近世彦根は全国でも有数の城下町だったんです。それに応じて深い歴史があります。あまり研究としてはすすんでいなかったのですが、今後、そういったところを紹介していきたいですね。」
 野田さんが興味を引かれているのは、彦根藩二代藩主・井伊直孝だそうだ。直孝といえば、病弱だった兄、直継に替わって藩主になり、大坂冬の陣で先陣を務めたなど逸話は伝わっているが、その実、どのような藩政をとっていたかというのはあまり知られていない。野田さんによると、直孝は彦根城下を住みよいまちへと作っていったり、幕府の重鎮として三代将軍・徳川家光や四代家綱の側で幕政にまで大きく影響を及ぼした人であるとか。他に並ぶ存在が居なかったので特別な役職名は付けられなかったが、後の幕府最高職である大老の元を築いたのは、他でもない直孝であるという。野田さんの興味は尽きない。来年にも企画展として、知られざる直孝がお目見えする。
「彦根には日常に歴史が感じられるものがたくさん残っています。それをより多くの人に伝えたいですね。博物館では毎月のテーマ展のほか、常設展でも毎月展示替えを行っています。何か新しい発見にめぐり合えるかもしれませんよ。」
 博物館ではこれから、来年に控えた国宝・彦根城築城400年祭に向けて、早くも様々な企画展が準備されている。野田さんに城下町検定について訊ねてみた。
「私が作る問題は、おそらく築城400年祭にあわせた内容になるのではないかと思います。去年より、少し難しめの専門的なものも取り入れたいですね。そこから彦根の魅力を再確認してもらえるような問題にしたいと思います。」

彦根史談会会長
中野修吾さんに聞く

中野修吾さん

 彦根史談会の歴史は古い。戦前、郷土史が好きな人たちが図書館に集まり、歴史のまとめを手がけたのが始まりといわれている。戦後になり、郷土史家に加えて学校の社会科の先生にも声がかかり、本格的に会として動き出したのだそうだ。当時、中学校で社会科の教員をしていた中野さんが入会したのもそのときだった。
「もともと、個人的に歴史的な物語が好きだったので会には興味を持っていました。いろんな人が関わっておられて、会員が最大で350人を超していたこともあります。」
 現在、会員数は250名程度。年に1回、機関誌『郷土研究』を発行するほか、市内から県外まで史跡探訪に足を運び、展示会なども企画している。史談会は文書史料だけでなく、伝説物語も含めたロマンある身近な郷土史が生まれたらと願っている。
「西国三十三カ所というのがあります。かつて彦根周辺だけで観音巡礼ができる彦根三十三カ所というのもあったんです。今は忘れられてしまったそこを特定するために、全て訪ねたこともありました。」
札所として機能していなかったり、中にはもはや存在しなくなった寺院もあるそうだ。「彦根の町には昔の様子を伝える様々なものが残っています。歴史のまちであり、学問のまちであるといえるでしょう。それがあまり浸透していないのが残念ですね。」
 来年に控えた国宝・彦根城築城400年祭で全国に彦根の良さをPRし、「後世まで残っていくようになってほしい」と中野さんは願っている。
 中野さんが関心を抱いておられるのは、最後の彦根藩主・井伊直憲や偉業を成し遂げた彦根出身の人物である。それらをまとめた『彦根の先覚』という書籍が彦根市教育研究所の編纂で出版されているから、城下町検定には必読書かもしれない。検定について、中野さんは、
「幅広いジャンルにわたって設問が用意できたら一層興味深いものになると思います。歴史だけでなく、地理的なものや現代の事象情報も込めたいですね。地元の人だけでなく、全国へも発信できるようになれば面白いかもしれません。」
と話された。設問の文章量から選択肢に隠されたヒントまで、練りに練った郷土の魅力が散りばめられそうである。
 史談会では、今後、主に郷土史の観点から昔話を集めた『彦根物語』をまとめていくことも検討中している。これまで、城や武家を中心とした日本通史的な彦根の歴史観ばかりが語られることが多かったが、より身近なエピソードも一般民衆史的なものが加えられることになるのかもしれない。楽しみである。

彦根商店街連盟副会長
若林成幸さんに聞く

若林成幸さん

 彦根城下町検定の、そもそもの始まりは市内の商店街を深く知ってもらうところにあったという。ご当地検定が全国で流行している昨今、地元商店街連盟が主催する検定は他都市には無い。当初は商店街検定にしようという案もあったのだが、「彦根城下町検定」というネーミングに落ち着き、設問に幅ができ深みを持たせられるようになったという。
「時代によって業態は変わってきましたが、昔から同じ場所で商売を受け継いでいるお店のルーツは彦根の城下町にあります。それがこのまちの良さであり、強みになっていると思います。」
商店街連盟副会長の若林成幸さんの話である。
 ずっと暮らしてきたまちであるからこそ詳しく知っていることも、逆に知らないこともある。城下町検定はそれを、受験者だけでなく主催者にも再確認させてくれるのだという。
「昨年、第1回の検定を開かせてもらったのですが、予想以上に『彦根の事をもっと知りたい』という知的欲求が強くあることに気づきました。主催者側も勉強になることが多い事業だったので継続することになりました。」
 昨年の彦根城下町検定では、商店街に関する問題も多く出題され、彦根の歴史を詳しく予習するだけでは難しいのではないかという予測もあったが、実際受験をされた方の中には、商店街連盟発行の広報誌「あっ!」のバックナンバーを全て読み込んできたという人や、オリジナルの単語カードを作成して挑んだ人、ベルロードのベルの数を数えてきた人など、検定にかける情熱が伝わってくる場面もあったという。
「各商店の仕事として、それぞれの商品を深く掘り下げ、お客さまに商品知識とサービスを提供するだけでなく、城下町検定を通して、まちの様々な情報も提供できるようになるといいですね。主催者側も楽しみながら全員で勉強できる事業としてこれからも続けていきたいです。とりあえず、来年の築城400年祭に合わせて第3回の城下町検定は実施されることになっています。」
 今年開催される第2回にも、商店街に関する問題は出題される。勿論のことながら、昨年とは違う趣向の設問が用意されるという。
「今回は、歴史や観光の専門の方にも問題を作っていただくので、設問が重複しないよう、商店街オリジナルの問題を作成する予定です。現在も変化し続けるまちの様子や商店街の取り組みなども含まれてくるでしょう。」
 対策としては、参考書を片手に予習するのもいいけれど、実際に商店街を歩いてみるのが一番確実かもしれない。普段見慣れたはずの風景の中に新しい発見がまだまだ隠されていることだろう。
「まちを知ることによってまちの見え方もきっと違ってくるのでしょう。そして、量販店とは異なる商店街の良さにも気づいていただけると嬉しいですね。城下町彦根の隅々までを知ってみたいという望みが未だ衰えることなくあることを期待しています。」
 検定試験の対策セミナーは検定受検者でなくても参加することができる。若林さんはできるだけ多くの参加を呼びかけている。

彦根ボランティアガイド協会会長
高田靖幸さんに聞く

高田靖幸さん

 高田さんは「彦根ボランティアガイド協会」が発足したときと同じ頃に彦根へ越してこられた。以前に彦根を訪れたとき、きれいなまちなみに心を動かされ、このまちに住みたいと思われたそうだ。
「海外で生活していたこともあったのですが、そのとき向こうの博物館や美術館でガイドを見て、その仕事ぶりが楽しそうだったので興味を持ったんです。」
 彦根に住むようになってからは城下の歴史や文化について研鑽を重ねてこられた。
 そもそも、ボランティアガイドの仕事は大きく分けて二つある。
一つは文字通りまちの中をガイドすること。依頼されてコースを案内することもある他、市の巡回バスに乗り込んでのガイドや彦根城内常駐ガイドもこなす。
 もう一方は、日々の勉強である。
ガイドに幅を持たせるためには、年表をなぞるような解説だけでは足りない。様々な方面から考察された意見や歴史の裏話なども研究する。月に2回、ボランティアガイドのメンバーで行う勉強会に加えて、個人でも新しい情報を取り入れることを心がけているのだという。
「私たちが学んだことで、彦根を訪れた方々が喜んでくれるのが嬉しいですね。逆に私たちが教えてもらって、なるほどと気づくこともあります。そうやって、つながりが深まっていくのがとても面白いです。」
 彦根ボランティアガイド協会では様々なコースを設定している。定番の城や武家屋敷のまちなみも含まれる他、観光客に好評なのは幕末の大老・井伊直弼の生まれ育った場所を巡る「花の生涯コース」だそうだ。
 高田さんのガイドのポイントは「1回限りで終わらせないこと」。最初に案内したときに、また2回3回と足を運んでもらえるよう、彦根の魅力を伝える。中には高田さんを指名して4回も来られた人もいるという。
「彦根には独自の歴史や文化がたくさんあります。市内の人がそれをあまりご存じないのが寂しいですね。城下町検定については、ただのペーパーテストで終わるのではなく、彦根のことをもっと正しく知りたくなるような、実際に現地に行って確かめたくなるような問題にしたいですね。彦根の素晴らしさを伝えるお手伝いができればと思います。」
 高田さんの、今現在の興味は彦根の各所で見られる「矢穴」なのだとか……。
詳しく知りたい人は、俳遊館を訪ねてみるといい。井伊の赤備えと同じユニホームカラーの皆さんが、未だ知りえない身近な彦根についてガイドしてくれるはずだ。勿論、検定試験対策としても最良だろう。

ビジュアル問題もあるかも!?

レート白粉

 「白粉」は「おしろい」と読む。この看板は今も旧魚屋町に残っているのだが……。という写真を使った問題が出てくる可能性もある。ちなみに、「レート」とは、明治11年平尾賛平商店として創業、昭和24年社名変更しレートとなった化粧品メーカーだ。レート化粧品は「東のレート、西のクラブ」と言われる2大トップメーカーだったらしい。城下町検定に参加し、高得点をマークするというのも面白いけれども、検定をきっかけに「知らなかったことが解るようになる」というのが、本当は一番楽しいのかもれない。
 彦根弁ヒアリング問題の可能性だってある。詳細は10月中頃の決定となる。

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 この記事は、2006年8月27日執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合がございます。